ドリーム小説




Welcome to Adobe GoLive 5



=2=






それから二日後、再び妖魔と遭遇する。

巨大な妖魔が三匹も現れて、一団はなんと半数にも減ってしまった。

「お父様!早く馬を!」

父を逃がし、は妖魔に向き直った。

目の前の妖魔を頭上から叩き斬り、もういないのかと後ろを振り返ると、麩哩がまだ戦っていた。

「危ない!」

麩哩の足が獰猛な爪に引き裂かれ、横倒しになったのを見て、は援助に入った。

「麩哩!私の馬に乗って!早く!」

「お前はどうするんだ」

「私はいいから!早く!あなたに誰かの加護があるなら、私にだって加護があるのよ!大丈夫よ、ちゃんと祈ってきたんだから!!」

足を引き摺りながら移動する音が背後で聞こえ、は剣を握り直す。

「さあ…来なさい!!」

恐ろしい咆哮と供に、跳躍した妖魔を正面で捕らえる。

剣と牙が切り結ぶ音と、馬の蹄が同時にする。

「くっ…!」

の体は、力に押され沈みだす。

ふっと力を抜き、妖魔の力を利用して地面へと倒れた。

均衡を崩した妖魔の下をかい潜り、横腹に剣を衝き立てる。

悲鳴にも似た嘶きが耳を突いたが、油断せずにそのまま剣を引き抜く。

直後、体がさらわれる様に宙に舞い、気がつくと馬上だった。

「麩哩!」

「これ以上、一団に置いていかれたら、俺達は野垂れ死にだ」

そう言われて、は麩哩に同意した。




「さっき、祈ってきたと言っていたな」

馬を走らせてしばし、のすぐ後ろから、麩哩の辛辣な声がする。

「ええ、才の里で祈ってきたの。黄帝に」

「そうか…知らないようだから、一つ教えておいてやろう。黄海は神から見捨てられた場所だ。ここでは天帝の加護も、黄帝の加護もない。だからそれに期待して、人を助けよう等と思わない事だな。自分の身だけ守ってろ」

「勝手に体が動くのですもの。それを押さえられるほど、私は大人じゃないの。でも、そうね。加護がないとなると…なんとか自力で頑張るしかないわね。まあ、今と何も変わらないって事になるけど、現にこうして生きているもの。これからだって生きていけるわ。」

後ろから溜め息が漏れ、それは呆れとも、諦めともつかないものだった。






馬を走らせてすぐに、一団へと追いついた。

全員に知らせて、その足を速める。

もう大丈夫だろうと思った時には、夜中になっていた。

野営の為に、木々の合間に消えていく人々。

その中に、は麩哩の姿を探した。

先程の妖魔がどれ程の手傷を負ったのか、見届けていないは、麩哩に確認しようとしていたのだった。

それだけ、不安だったのだ。

日に日に、襲撃が多くなるような…そんな気がしてならなかった。

麩哩を見つけ、駆け寄るの目前に、まだ幼い少女が立っていた。

「え?子童なんて…一団にいたかしら?」

そう呟いて、はその少女に近付く。

「あなた…どこの子?」

少女は黙ったまま、暗がりを指差した。

ぼんやりと灯りが見える。

「あそこは誰かしら?お父様ではないし…ねえ、誰についてきたの?」

「やめとけ。その子は口がきけない」

「え…」

麩哩の声が後ろからして、少女はゆっくりと頷く。

着ているものから判断すると、どうやら家生のようだった。

「どうしてこんな小さい子が、黄海にいるの?」

そう聞くに、麩哩はなにも答えずに少女を促した。

少女は言われるままに、家公の元へと戻る。

少女の姿が消えた頃、麩哩はぽつりと言った。

「生贄だろう…」

信じたくないような事が間近で聞こえ、は麩哩を見た。

「今、何って言ったの?」

麩哩は怪訝そうな顔をして、もう一度言った。

「生贄だ」

「何…?何の生贄?まさか…昇山者のための生贄って、言うんじゃないでしょうね…」

最大級に嫌そうな顔で、麩哩はに言った。

「その通りだ。王になろうとしている人間のやる事じゃないな」

はき捨てるように言った麩哩を、は信じられないと言った目付きで見た。

「正直言って、あそこに雇われなくてよかったよ。あの子が食われる間に、王を目指す主は逃げようって魂胆だろうぜ」

は少女の消えた方角を見ていたが、ふいにそちらへと踏み出した。

「お、おい!待て、待てっ!」

「どうして止めるの!!」

「言ってどうするつもりなんだ!それでどうにかなるのか!?」

の腕をつかみながら、怒鳴っていた麩哩は急に声を落として言った。

「妖魔に襲われた時、戦う術を持たない者は、誰かを差し出すしかないんだ。人として、褒められた事ではないが…ここでは仕方がない。あの子は可哀想だと思うが、俺達がどうこうしていい相手じゃない」

「だけど!」

「なるべく妖魔を回避して、遭遇すれば俺達が戦う。それ以外に、俺達に出来る事があったら、教えてくれ」

はき捨てるように言った麩哩を、は呆然と見つめた。

確かに言う通りだろう。

しかし、あんな小さい子を黄海に連れてくるなど、初めから生贄のためで連れてきたとしか思えない。

「それが、昇山者のすることなの…!」

きつく噛まれた唇が、ぷつりと切れて、の感情は今にも爆発しそうだった。

麩哩は黙ってその場を去り、自らの主が待っている陣営へと戻って行った。

もまた、無言のまま父の元へと戻った。

寝静まった陣営で、は剣を抱え込み、一人、起きていた。

この一団は、終わりだ。

直感的にそう思った。

運など…かけらもあるはずがない。

少なくとも、あの少女を連れた者が登極する事はないだろう。

「人道もなにもかも…ここにはないのね」

人々の犠牲の上で進む道中。

それを見越して、人を連れて来るというのは、殺すのと同じだ。

家族ではない、家生の小さな子を…

口もきけない子を、妖魔に差し出そうと言うのだから、王になろうなど片腹痛い。

黄海に入ってからというもの、憤りと怒りの捌け口がみつからないまま、何日も経過していた。

はすっと目を閉じて、眠ろうと試みる。



続く






100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!





麩哩ドリーム!?

あうぅ、すいません☆

もうちょっと待って下さ〜い!!

                     美耶子