ドリーム小説
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金の太陽 銀の月 〜銀月編〜 =7= それから一週間後、利広はを訪ねるべく、港町に来ていた。
さんざん迷った挙げ句、気になる方が若干勝り、こうして来たのだが…利広はの行方を知らなかった。
「まいったな…ちゃんと聞いておけばよかった」
聞くにしても、あの時点ではまだ何も決まっていない。
逗留先を聞いた所で、一週間もすれば変わっている可能性もある。
「仕事を探すのも大変だろうし、まだ何処かの舎館にいるかな?」
利広はそう呟いて、舎館を巡る事にした。
しかしいくら舎館を巡っても、はおらず、その日はいとも簡単に暮れてしまった。
翌日も利広はを捜したが、どこにも行方が知れない。
ついには諦めて街を離れてしまった。
帰途に着きながらも、少し不安に見舞われた利広は、近い内にまた探しに行こうと考えていた。
次の週も、再び港町に来ていた利広。
その日もの行方は掴めず、夕刻が迫るまで探してみたが、やはり諦めて街を出てしまう。
さらに一ヶ月後、利広は港町に戻ってきた。
今度は小学などを探し始めた。
しかし山客が通っていると言う所は何処にもなく、利広は再び舎館を廻って探した。
ついには街の人を捕まえては、山客がいないかを聞いて廻ったが、噂にもなっていない。
「どこに消えてしまったのかな…」
少し難しい顔をしながら、利広は再び港町を離れた。
「今日も手がかりは…ないだろうね」
こうして探しに来るようになって、早半年が過ぎようとしていた。
その間、の手がかりは何一つ無かった。
もうそろそろいいだろうかと、自分に言い聞かせたのはつい二週間前の事。
それなのに、また戻ってきてしまった。
あれから、は何をしているのだろうか。
歩きながら考えていた利広は、はたと立ち止まる。
「しまった…。まだ行っていない所があった」
今更、と自分を責めたくなったが、ともかくと言い聞かせて足を進める。
利広が辿り着いたのは、県城だった。
が届けを出した時以来、利広はここに来ていない。
だが、まだこの街にいるのなら、必ず顔を出しているはずだし、手がかりもあるだろう。
どうして今までこの事に、気がつかなかったのだろうかと考えながら、利広は県城に入って行った。
「山客の?…あんた名前は」
「利広と言いますが…」
「ああ!聞いておりますとも」
何を聞いていると言うのだろうか。利広がそう問うと、本人に聞けと言われてしまい、の居る場所に案内される。
官府にいると言うことだろうか。
「利広と言う名の人が尋ねてきたら、通すように言われておりましたので」
堂室の外で案内の者はそう言って退き、取り残された利広は、中から聞こえてくる声に耳を傾けた。
「ああ、これは地図ですね。崑崙の全体図かと思われます」
の声によく似ていると思ったが、半年前の印象と随分違う。
案内されたのだから、この中に居るのだろうが、今入っていっても良いのだろうか。
「この中にどれほどの民が生活しているのだろうか」
男の声に、によく似た声の女は答える。
「崑崙の人工は約十二億人。蓬莱の人口とは比べものにならないほどです。もちろん国土も広く、歴史も古いのです。ゆえに、数多くの古都を有します」
「ほお。で、こちらの小さい物は?建物の様だが。模型か…?」
「これはキー・ホルダーと言って、天安門を模した物です。土産用に売られている物ですので、正確とはいえないでしょう」
どうやら崑崙について説明しているようだ。
蓬莱の出身だと言っていたはずだが、と利広は尚も耳をそばだてた。
「天安門広場では、毎朝、五星紅旗が掲げられます。広場の東に革命博物館、歴史博物館があり、西には大会堂があります。南は…確か、正陽門があったと…ただこれはあくまでも私の記憶ですから、あまり確かではないのですが…」
戸口の前でじっとしていた利広は、背後から駆けつけた者に軽く跳ね飛ばされ、横によろめいた。
体制を立て直し、何事かとその者を追って中の様子を見る。
中にはやはりがおり、駆け入ったその者は大声で言った。
「また新しい物が流れ着きました!これは何でしょう?」
「その箱…どこかで見たような…」
「まあ、空けて見れば分かるだろう」
「あ…待って…」
の制止が少し遅かったのか、空ければ良いと言った男はすでに箱に手をかけていた。
その直後、堂内に爆音が轟き、次いで絶叫が轟く。
戸口に向かって、突進するように逃げまどう者達を避けた利広は、それを見送った後、身構えて堂内に入った。
中にはぽかんとしたが立っており、入って来た利広に首を向けているところだった。
「り…利広さん!」
「!何があった」
「え…ああ。何でもないのですが…」
はそう言うと、大きく笑い出した。
笑いながらの指さす先には、赤く恐ろしい形相をした、何か得体のしれない物が、右に左に揺れている。
「それは…何だい?」
「これは人を驚かせるための仕掛けがしてある箱なのです。少量の火薬が仕掛けてあって、開けると音と一緒にこれが飛び出してくる。ふふ、みんな驚いて逃げてしまいましたね」
戸口を見て笑うは、半年前の人物とは別人のようだった。
「あ、利広さんは何故ここに?とてもお久ぶりでございますね」
「はどうしているのかと思ってね。様子を見に来たんだよ」
「隆洽に住んでいるのに…わざわざ遠い所を、ありがとうございます」
腰を折って言うに、利広は微笑んで言った。
「仕事中なのかな?だったら夜まで待つけど」
「…いえ。今日はもういいでしょう。みなさま逃げてしまわれた事ですし。前にも一度あったのですよ。待っていたのですけど、結局帰ってきませんでしたから。怖くてね」
そう言いながら、は庭院を指した。
「あそこに座りませんか?」
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