ドリーム小説




Welcome to Adobe GoLive 5



麹塵の袍


=11=



「まだいたのか」

諷詠と同じように声をかけてきたのは主だった。

しかし声をかけられるまで、全くといって良いほど気が付かなかった。

「主上」

「また迷った」

新王はそう言うと、景麒の横に座ってを見る。

しばし眺めて、ぽつりと言う。

「延王に教えて頂いた鸞と言う霊鳥は、春官大卜の管轄になるのか?」

「はい」

「ひょっとして、鳥の為の宮がある?」

「はい」

「へえ…あ、でも、今は違う人がいるのか…」

「いえ、今は誰もいないようです」

「誰もいない?その宮に?」

「霊鳥は梧桐宮に住まいます。その梧桐宮を守る春官の長を大卜と言いますが…その梧桐宮には、現在春官がおりません」

「ひょっとして、みんな女だった?」

「全員ではありませんが…絶望して国外に出た者もいたようです」

「じゃあ、大変なんだ…」

「ええ、恐らく。霊鳥が弱っていたようですから」

ふうんと言って、新王はを見る。

「彼女は…元気になったら、戻ってきてくれるだろうか」

ぽつりと言われた言葉に、驚いた景麒の顔があった。

王によって追い出されたが、王によって帰って来ることになれば…なにやら不思議な感じが拭えない。

「なんだ?変なこと言ったか?」

「あ、いえ…そうですね、恐らくは戻って来ましょう。前々王の時代から、霊鳥を守ってきたお方ですから」

「そうか。よかった」

本当ならば、景麒よりも早く金波宮に帰っていてほしい。

白雉の一声を、再び聞いて欲しいと思った。

しかしそれは難しいだろう。

未だ目覚めないのだから。

「おや?」

ふと、不思議そうな声を出す主を、景麒は無意識に見た。

「ふふ、一輪だけ違う花があるな」

すっと指さされた先に、確かに罌粟ではない花が揺れていた。

何時の間にか、そこには水仙が現れている。

淡青色の水仙。

それが意味するものとは。

「瑞花…」

「え?」

「これは瑞兆の一種です…天勅はまだだと言うのに…」

「めでたい印?」

「はい」

景麒がそう返事をした所で、一際強い風が吹いた。

夜目にも鮮やかな青い罌粟が舞い上がる。

岩盤を通り抜けて天を望み、吸い込まれるようにして消えた一片(ひとひら)を景麒の視線が追う。

「景麒」

ふいに呼ばれて、見上げていた顔を元に戻し、呼んだ主に瞳を移した。

「体調が戻ったら、是非戻って来てほしいと頼んでくれないか」

「は…?」

「偽王の乱のせいで、人員が減っているだろうから。景麒の様子を見る限り、信用して良い方なのだろう」

ちらりとに視線を移した新王は、にこりと笑んでその場を去った。

急に言い出した事に唖然とし、去りゆく主をじっと見送ってしばし。

消えてしまうまで、何故か動くことが出来なかった。

しかし、に視線を戻してすぐ、異変に気が付いた。

腕が動いているように感じたのだった。

胸元に組まれていたはずの手が、今は下に落ちている。

いくつかの罌粟をなぎ倒して、力無くのびている腕。

諷詠に言われて、首を持ち上げた時に腕が落ちたのだろうか。

記憶を辿ってみるが、確かな事は思い出せない。

だが、さきほど王が取った行動を思い返すと、何も無いことがむしろ疑わしい。

そう思い始めると、何やら落ち着かなくなりそうだった。

…」

小さく呟かれたその名。

「はい…」

微かに返された声。

その唇が動いたのを見なければ、風の音に消されてしまっただろう。

しかし確かにの唇が動き、小さな声が発せられた。



もう一度名を呼んでみる。

「台輔…?」

答えると同時に、薄く開かれる瞳。

!」

「台輔が見えるなんて…なんて幸せな夢…なのでしょう…ここは…夢の国なのですね…」

「ここは夢ではなく蓬山。新しい王と供に、天勅を受けるべくここにいる」

「まあ…主上が登極する直前の夢なのね…。この後、金波宮の白雉が鳴くのだわ…私が聞いた、白雉の人語…よもや、予王と言う謚号を付けられる事など、考えもしなかっただろう、幸せな瞬間を垣間見ているのですね…」

「舒覚さまではなく、新王は蓬莱から戻られたお方。の行きたがっていた、蓬莱で育ったお方」

「王…新王…?慶に…新王が…?ではこれは…」

「夢ではなく、ここは蓬山。諷詠がを助けた」

「諷詠…諷詠…が?」

頷く景麒を見つめる瞳が大きく開かれる。

それでもまだ、通常よりはあがりきらないようだった。

見つめる瞳は景麒を吸い寄せるように突き動かす。

の頬に手を当てると、安堵の為に深い息が漏れた。

「目覚めたら伝えて欲しいと主上が」

「え…私に…私にですか?」

小さな頷きとともに、景麒は新王の言を繰り返す。

「戻ってきてくれるだろうかと、金波宮に」

「また…戻っても良いのでしょうか…。鳳凰や白雉のお世話をする事が出来るのでしょうか」

「もちろん」

煌めく空の星が、の瞳の中で大きくなり、歪んで流れ落ちた。

「これは…夢ではないのですね…本当に…台輔がそこにおられるのですね…慶は…新しい王を迎えることが出来た…」

ただ頷く景麒の姿を、今のは映していない。

それでも静かに溢れ、零れ落ちる涙は幾多もの星を映しだしていた。

その煌めきはいつまでも絶えることなく溢れ、ただ無言で見守る景麒を少し不安にさせた。

「あまり泣いては、お体に障ろう」

「はい…はい…」

頷けないのか、声だけで答えたは涙を止めようと瞳を開ける。

青い罌粟は二人を包み、穏やかな風に揺られて花が舞う。

岩盤から覗くようにして見えている夜空は、静かにそれを見守っていた。























慶国の上空に瑞雲が現れたのは、が目覚めた二日後のことだった。

歓喜の渦巻く国土を思いながら、治療に専念する

本来蓬山は、ただ人が何の目的もなく居てもよい場所ではない。

そのため、出歩くことは禁じられていた。

尤も、自らの足で立つことはまだ出来ない。

諷詠の計らいで罌粟苑から近い宮へと場所を移し、牀の上での治療に切り替わっていた。

そしてある日を境に、驚くべき早さで回復していった。

「これはひょっとして仙籍に入ったのではないかしら」

諷詠がそう言って剥いた桃を差し出す。

受け取りながらは首を傾げる。

「主上を拝見した事がないもの。それはないと思うわ」

「あら?言わなかった?景台輔と一緒に罌粟苑へ何度かいらっしゃったのよ」

「え?本当に?」

「ええ、迷われて偶然」

の驚いた顔を笑って、諷詠は桃を食べるように促す。

「しっかり治して、早く慶に戻らなくてはね。王も宰輔もお待ちでしょうから、大卜」

「大卜…」

大卜、その響きがにもたらしたものは大きい。

「ええ、そうね。また…春官として金波宮に戻ることが出来るのね」

ひっそりとした宮に、小さな笑みが溢れていた。



続く






100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!





霊鳥が弱るかどうかは知りません。

蓬山にこんな場所があることも、もちろん捏造です。

間違えないとは思いますが、念のため☆

                             美耶子

    

良質な睡眠で効果的なダイエット
★副収入★ 貴方のホームページ・メルマガが広告媒体に!
せっかくだから勝負していけよ。未来予想ゲーム《eBet》
勘に頼って、小遣い稼ぎ、eBet。
パーフェクトハーモニー研鑽会
@nifty
完全無料のまじめな恋愛情報サイト「バンコム・恋愛ドットコム」
本を買って【ポイント】をもらおう!
スポーツ、映画、チャート、販売。。。ランキング予想!的中すれば100万円!!