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金の太陽 銀の月 〜太陽編〜


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その時利達は国府の最奥にいた。

が隆洽山を登っていることなど知らず、利広を問い詰めている所だった。

「お前、今度途中で逃げ出したら、ただじゃおかないからな。忙しい時期ぐらい、大人しく手伝え!」

「はいはい。逃げませんから、そう怒鳴らないで下さい」

「本当だな!今度宮城を抜ける時には、覚悟するんだな」

「ああ、そう言えば兄さん。が…」

突如、ばさりと音がして、利広は言を切った。

辛うじて指に引っかかっていた、最後の書面がはらりと落ちる。

「兄さん?」

呼ばれた事によって、我を取り戻した利達は無言で書面を拾い、それをそのまま利広に押し付けるように渡した。

「夜までに目を通しておけ。夕餉の時に主上に是非を問い、明日の朝には提出だ。分かったな」

「はいはい…」

書面の多さに気がとられ、利広は何を言いかけていたのか、すっかり忘れてその場を離れた。

残された利達もまた、ぎこちない足取りで自室へ退がった。























さらに数日後。



まだ慣れない宮城の中で、は政務をこなしながら、他官府へと頻繁に足を伸ばしていた。

もちろん、利達を探していたのである。

とは言え、宮城は広い。

春官府すら、全てを制覇していない。

「これじゃ、何日かかるか分からないわね…」

深き溜息を吐きながら、は書面を作っていた。

それを持っていくのは天官府。

他官府に用事のある仕事は率先して受け、より多くの人に会おうと必死だった。

しかし、の予想を遥かに凌駕して、官吏の数は多い。

百官諸侯と言っても、奄奚(げなんげじょ)を含めると、その数は膨大に肥大する。

ゆえに利達と再会する事は、未だ叶っていなかった。

唯一の救いは、夏官ではないと知っていることぐらだろうか。



王師一軍でも一万二千五百。

禁軍及び首都州師が全部で六軍。

探す気にもなれないその数が含まれるとなると、もはや不可能の域に達してしまう。

何かの折に夏官ではないという会話をしていてよかったと、胸をなで降ろした事もあったが、その時何処の官府にいるのかだけでも聞いておけばよかったと、今更ながらに思うのであった。

その影すら見つけられぬまま、時間だけが無為に流れていく。

は焦っていた。

再会が遅れれば遅れるだけ、利達の心が遠く離れるように思っていた。

そもそも思いを通わせている訳ではない。

仲は悪くなかったはずだったが、時間の経過と供に、新たな出会いがあるかもしれない。

もし利達が傷ついており、その時に優しく声をかけられでもしたら…

「駄目よ、そんなの!」

そう叫んだ所で、一人では虚しいばかり。

ついには最後の手段に出るべく、同時期に入った春官の一人を捕まえて問いかけた。






「利達という人なのですが、何処の官府に勤めているのかご存知でしょうか?」

最後の手段とは、人に聞くことだった。

一番に思いつきそうなものだが、これはの考えによって、却下された方法だった。

人に聞けば、噂になる可能性があったからだ。

と言う春官が、利達を探しているなどと広がってしまえば、利達の耳に入るかもしれない。

そうなれば、再会する事は容易になるかもしれないが――利達にその気があればの話だが――驚かそうとしている手前、それはなるべく避けたかった。

しかし、は二つの思いを天秤にかけた。

噂が広がる覚悟で早く再会するか、遅くなっても驚かす事を貫くか。



答えは簡単だった。

一刻も早く誤解を解きたかったし、何よりもただ会いたいと思った。

日々募っていくのは、早く会いたいという思いだけだったのだから。

「利達…?さあ…」

一縷の望みをかけて問うた答えは、期待できるものではなかった。

「知り合いか?」

「え?ええ…夏官ではない事だけは分かっているのですが…」

「すまんね。俺は知らな…待てよ…どこかでその名を見たぞ」

「ど、何処で…何処で見たのです!?」

凄い剣幕で問いかけるに、春官の男は一歩下がって言う。

「覚えていない。思い出したら言おうか?」

「お、お願いします」

「分かった。利達だな」

男はぶつぶつ言いながらその場から離れ、はにこにこと笑みを湛えていた。

最初の一人で分かるのなら、さほど噂にはならないだろうと思ったのだ。

他官府に探しに行く事は止めなかったが、はその男からの返事を待って数日を過ごした。




















「分かったぞ!」

ある日、春官府に行くと、先日質問した男が待ち受けており、を見ると駆け寄ってきてそう言った。



続く






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探しまくりですねえ…

宮城内を探すって言っても、なかなか難しいでしょうね☆

                  美耶子