ドリーム小説
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金の太陽 銀の月 〜太陽編〜 =7= 眼下では広がる街が見え始めていた。
「うわあ…大きい」
「あれが隆洽の街だ」
「さすがは首都ね」
熱心に街を見つめているの体制を時折確認しながら、利達は高度を落としていく。
地が大きく広がり始め、はそれと比例するかのように、心中の期待が膨らんでゆくのを感じていた。
新しい土地、新しい出会い。
それらがを待っているのだ。
もう二度と戻れないとあっては、こうやって生きがいを見出さなくては、やっていけないものなのかもしれないが。
それでもの心情としては、期待に満ちていた。
利達と離れるのは少し寂しい気がしたが、その感情が意味するものは、会話の出来る人物が消えるためだと思っていた。
それならば、言葉を覚えていけば良い。
今まで以上に必死になれば、なんとかやっていけるだろう。
そう心に誓って、騎獣の背から地に降りた。
「ではまず国府に行くといい。近くまで送ろう」
「国府?官府ではなくて?」
「首都には国府がある。民が入る事が出来る場所は限られているが、取次ぎには仙籍にある物がいる。の言葉を理解できる者が勤める」
「よかった…利達はもう帰っちゃうの?」
そう問えば、しばしの沈黙が訪れ、待っているの目前で、利達は何か考え込んでいるようだった。
「国府で旌券を受け取った後、住まう場所が必要だろう?」
「ひょっとして、一緒に探してくれるの?」
「もちろん。任せてくれていいと言っただろう」
言いながら、利達は大途の先を指差す。
途の遥か先に、長く続く広い階段が見えていた。
利達の指はそこを指している。
歩き出した二人は、まっすぐに途を進んで階段に辿り着いた。
「うわあぁああぁ!!」
これまで以上に大きな感嘆の声に、利達はの方を驚いて見た。
「凄い大きい〜!ね、見て利達!空に突き抜けて一番上が見えないわ!」
「そ、そうだな。凌雲山を見るのは初めてだろうか?」
「凌雲山?こんな山の事?天をつき抜けた山の事?」
そうだと頷く利達に、はまた感嘆の声を上げる。
「本当に凄いわ!ね、ここに入るの?私、中に入ってもいいの?」
「もちろん。中に入らねば、手続きが出来ない。わたしはここから行けないが、一人で大丈夫だろうか?」
「うん。ありがとうね、利達。本当に助かったわ」
「まるで今生の別れのようだ。わたしはここで待っていよう」
「分かった。すぐに戻ってくるね!」
手を上げて駆け出すを、微笑んで見送った利達であった。
待つのに疲れて足を動かし始めた頃、は戻ってきた。
斜陽を受けた頬が、僅か朱に染まっているようにも見えた。
「凄いの!とっても凄いの!見て見て!」
興奮気味に話すに、利達は落ち着くように言って話を促した。
「これね、身分を保証してくれる物なんだって!でね、ちゃんと勉強もさせてくれるみたいなの!凄いよね!」
勢いをそのままに、今見聞きした事を延々話続ける。
よほど感動したのだろうと、微笑ましい気持ちでそれを聞いていた利達。
話し疲れて息が荒くなるまで、は話し続け、その後恥ずかしそうに俯いてようやくそれを終わらせた。
「ごめんなさい。感動しちゃったから…その…」
「構わない。では職を探しにいこうか」
「うん!」
元気よく返ってきた返事に頷いて、二人は並んで歩き出した。
街に戻った二人は、早速雇ってくれそうな場所を渡り歩いた。
「はどういった仕事がしたい?」
「う〜ん…本当は客商売が好きなんだけど…そうね、今は言葉が分からないし、住む場所もないから、宿屋で雇ってもらえればいいんだけど。掃除でもしながら、言葉を覚える事が出来るでしょう?住み込みで雇ってもらえそうだし」
「ああ、なるほど。それは名案だ」
そんな会話の後、舎館を巡り始めた二人。
利達が交渉をしてまわり、六軒目で良い条件で雇ってくれると言う所が見つかった。
舎館の女将は優しそうな人物で、利達も安心して帰れそうだった。
「利達…」
の小さな声が聞こえ、利達は女将からに向き直った。
「。わたしはそろそろ居院に戻らなければ。また様子を見に来よう」
「本当?また会える?」
「もちろん。何か苦情があれば、わたしに言うようにと女将に言ってある」
「じゃあ、迷惑をかけない様に頑張るわ」
「よろしく頼む」
利達はそれを最後に、舎館から出て行った。
何も言えないまま、はじっとそれを見送っていた。
あっさりと訪れた別れに、どのような反応を示して良いのか分からずに、その後も動けずにいた。
だが、後ろから肩を叩かれて、は振り返る。
にこにこと笑む女将に促されて、は奥に引っ込んでいった。
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