ドリーム小説




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月の花


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玄英宮に戻った二人は禁門で別れ、その数刻後、の許へ使いが来た。

は小司徒に昇格。

正寝への出入り及び禁門の使用も自由。

王の前で伏礼をせずともよく、また、好きな騎獣を与えると、使いの者は言う。

驚いて聞いていたが、禁門への出入り、騎獣の件は断った。

乗騎がなければ禁門は使用できないし、空を飛び上がる事など、とんでもない考えだった。

しがみついてでさえ、恐ろしいと言うのに、一人で乗れるとは思わないからだ。

飛ばないものもあると言われたが、それでも勢いで断ってしまっていた。



その使いが戻った後、帷湍が姿を現す。

「大司徒…も、申し訳ございません!勝手に抜け出してしまいました。幾重にも重ねて謝罪申し上げます」

跪いて謝るを、帷湍は立つように言って用件を告げる。

「それはもういい。どうせあいつが勝手に連れ出したんだろう。それより、川に木材を流すのだと?」

「は、はい…」

「みんな感心しておったぞ。さっそく具体的に詰めていきたい。明日から地官を上げて打ち合わせだ」

「はい」

はにこりと微笑む。

それを見て、本当に笑えるようになったんだなと、妙に感心する帷湍だった。

























尚隆に王だと告げられて、早くも三ヶ月が過ぎた。

一度王としての面識を持ってしまうと、自室に呼ばれる事も多くなったが、あれ以来、治水調査のために尚隆がついてくる事はなかった。

それは尚隆が選んだ事ではなく、が言わないからだった。

立場的な事を考えると、連れまわしていいはずがないと踏んでの事だった。

だが、黙って言った後は何故か機嫌が悪くなるようだったので、あまり行かないようにして、調べた物を効率よく判断するため、手引書を作成した。

それらを見ても、まだ情報が足りないと思った所にだけ、行くようにしたのだった。

「大司徒。擁州に向かいたいのですが…」

そう言い出したの手元には、自らの作成した手引書があった。

筆を走らせていた帷湍は、顔を上げてを見た。

「擁州に?」

「はい。以前竹を植えたのを、覚えておいででしょうか?」

「それはもちろん。忘れてはおらんが、様子を見に行きたいのか?」

「はい。雨季が去った後の、根の張り具合を確認したいのです。地形を変えるような事がなければ良いのですが、何か見落としていてはいけないと思いましたので」

「それは構わないが、どうやって行くつもりだ?空は怖いんだろう?」

「は、はい…空行は避けたいのですが…地を行くとかなり時間がかかるでしょうか?」

「今一度我慢して空を行く事を薦めるが…成笙に頼んでみるか?」

「お願いしてもよろしゅうございますか?」

もちろんだと言って、帷湍は立ち上がる。

「ありがとうございます。頑張ります」

一大決心をしたように立ち上がったは、その表情を強張らせていた。

空にあると想像するだけで、恐怖を感じているその様子に、噴出したいのを我慢しながら、帷湍は成笙を尋ねた。















「空行師を?構わないが、主上には?」

成笙は帷湍にそう聞いたが、もちろん知らないと答えが帰ってきて、胸を撫で下ろした。

「知ったら絶対に行くだろうからな」

そうはさせるか、と帷湍は言い、成笙もそれに続くように言う。

「念のためにが発つまで、見張りを強化しておこう」

強く頷いた帷湍を見て、成笙はさっそく動く。



















翌日未明、は空行師一名と供に玄英宮を発った。

腕の立つ者をつけたのだが、何故か一抹の不安が残った帷湍は、騎獣の影がなくなるまで見送っていた。

そのまま政務に入った帷湍は朝議の後、尚隆の許へと向かう。

「帷湍か」

げんなりしたように言われた帷湍は、最近よく宮内にいる王に目を向けながら、書面を渡す。

「ああ、そうだ」

ふいに真顔になった主を見ながら、帷湍は次の言を待つ。

に言っておけ。近々何処かを調べに行くのなら、擁州は避けるようにと」

言われた帷湍はやや青ざめる思いで尚隆を見ていた。

「何故です?」

素早く聞いたのは朱衡の方だった。

「以前行った川付近…清郡だがな。少し危なそうだ」

「危ないとは?」

「太守の動きがな…五十年もこえてようやく動き出したか、もしくは…」

「それは、清郡のどこだ」

今や蒼白になった帷湍は、それだけを言って答えを待った。

「どこだ、とは?」

訝しげに聞き返す尚隆に、帷湍は今朝が発った事を告げる。

「何?護衛は」

が複数の護衛を嫌がるのでしょう?いつものように一名だけではないのですか?」

朱衡の言った事に頷いた帷湍は、激しく後悔していた。

何故無理を言って複数名の護衛をつけなかったのだと。

「その太守はどう動いているのです?謀反ですか?」

朱衡に問われた尚隆は、首を振って言う。

「まだそこまでは分からぬ。私服を肥やしているだけやもしれぬが、金回りがどうにも激しいようだ」

「す、すぐに追手を…成笙は今?」

言いながらも返事を待たずして、帷湍の体はすでに動いていた。

殆ど駆ける様にして出て言った帷湍を見ながら、朱衡は尚隆に向き直った。

「また間諜の真似事でもなさったのですか?それにしても清郡とは…」

「まあ、川沿いを歩いているぐらいで、捕らえられたりはしないだろうがな」

「それは、そうでしょうが…」

不安が残ったまま、二人は口を噤んでいた。

しばらくすると、朱衡は小臣らに見張りを命じて、帷湍を探しに退出してしまった。

朱衡が帷湍を探し出した時には、五名の空行師が後を追って出たばかりの頃だった。

不安気な表情のままそれを見守っていた、帷湍と成笙に近づいていく。

「不安な気持ちは分かりますが、我々も今から動いていたほうが良いでしょう。私はひとまず秋官府に戻って、指示を出してきますから、帷湍も地官達に指示を。情報が少なすぎますからね」

要件を告げるだけ告げ、朱衡は秋官府へと向かって行った。

帷湍も地官府へと戻って、地官を数名集める。

地税の収納状態を調べさせ、その清郡にまつわる事を知っているだけ集めさせた。



続く






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※清郡なんてものはありません。

この辺から、捏造のオンパレードが始まります。

さてさてどうなりますことやら☆

                           美耶子